表具は書 絵画作品にほどこす衣装です。
求められるのは作品を永く美しく保たせる機能性。
もうひとつが鑑賞のための装飾性です。
色鮮やかな金襴や渋い緞子、さまざまな裂地からその作品にふさわしいものが選び出され、主役である作品を引き立てます。
表具には永い歴史の中で培われた決まりごとがあります、
それを知ることで鑑賞の楽しさは大きくひろがります。
さらに自ら裂地を選び表具をデザインすることも…
いにしえの数寄者もはまった 好み表具 、
これこそ最高の楽しみでしょう。
掛け軸の機能性
薄い紙や絹地に書かれた書 絵画作品( 本紙 と言います)は弱く傷みやすいものです。
本紙の保存のためには掛軸の形態は最適と言われています
裏打ちにより補強されること。
巻くことにより画面が覆われ、紫外線など環境ストレスから守られること。
しかし裏打ちは糊ではるためこわばりを生じます、
こわばったものを巻けば折れてしまいます、
折れは絵の具の剥落と本紙の断裂につながります。
そのため昔から柔らかく素直に仕上がるように、さまざまな工夫が重ねられてきました。
それでも経年劣化や保存環境の悪さやアクシデントによって傷むこともあります。
そうした場合には裏打ちをはがし、補修後ふたたび仕立て直すことで再生されます、表具は再生を前提に仕立てられているのです。
数百年前の掛軸がしっかりと残っているのはこのためで、再生を繰り返し今に伝わっているのです。
掛軸の装飾性
表装していない状態の本紙を まくり といいます。
いかに名画名跡であっても まくり で展示されていたならば、どんなに味気ないものでしょう。
本紙を引き立てるために周りに添うように付けられた裂地、これが表具です。
本紙は表具と一体となって鑑賞されてきました。
両者は切り離すことのできない存在といえるでしょう。
表具には様々なスタイルがあります、これは本紙の種類によってほぼ決まります。
永い歴史の中で仏画ならこう、墨跡ならこう、南画ならこう、というような約束事が定められてきました。
表具のスタイルからそれがどんな本紙なのかひと目で分かるようになっているともいえるでしょう。
使われる裂地は実に多彩で、これも本紙の種類や作者、画題、などの条件から、また持ち主の好み、そして飾る 場 に応じて選ばれます。
そして実際に本紙にあてて映りをみて決定する。
この 取り合わせ という作業が作品の良し悪しにかかわる 最も大切な仕事です。
ふさわしいスタイル、ふさわしい裂地 色 文様、絶妙な寸法、
すべては本紙を引き立てるために、しかし主張しすぎないように。
名品といわれる掛軸はみな素晴らしい表具がほどこされています。
本紙と表具がお互いを引き立て、芸術性を高めているのです。